大丈夫?
「大丈夫?」
私が小学生の頃から、家族で食事をしていると母がよく聞いてきた質問である。
普通は「おいしい?」ではないのかと疑問を抱きつつも、「お口に合いますか?」を家族用語で表すと冒頭の言葉になるのかと勝手な解釈をし、「大丈夫」と答えていた。
この言葉の真相を知ったのは、妻と3歳になったばかりの息子を連れ実家に帰省した時だった。
母はカニピラフを作りながら、「大丈夫かな?これも大丈夫かな?」と独り言を言いだした。
私は、「2人ともカニは好きだから大丈夫だよ」と答えたが、母からの返事はない。
まあいいかと私が手前に置いてあったカニ缶を何気に見てみたら、ビックリ!
賞味期限が10年くらい過ぎていたのだ。
直ぐに、母に賞味期限が切れている事を伝えたが、「大丈夫だよ」の一言。母曰く、調味料なら20年、缶詰めなら30年は大丈夫らしい。
呆れた私が、「流石に10年は駄目でしょ」と諭したが、「だって、実際にあんたら大丈夫じゃない」の一言。
そう、母は頂き物の缶詰めや冷蔵庫に入れっぱなしだった食材を料理した時に、私たちへ「大丈夫?」と質問していたのだ。
お気楽主義の母らしいと言えば母らしいのだが、何も知らず、何十年も前のものを幼少時代から食べさせられていたとは恐ろしい。
そう言えば、昔食べた鯨肉のあの味は…。
日曜日の昼下がり
「よし、久しぶりに気合を入れて洗車するか!」
最近は、曇り空ばかりの日々が続いていたが、久しぶりの良い晴天の週末となった。
こんな良い晴天の日にやるべきことと言えば洗車だろう!と私は意気揚々と洗車場へ向かった。
洗車機では、いつもより少し高いコースを選択し、下部洗車のオプションまで付けた。
ライトの虫取りをこまめに行い、車外を綺麗に拭いて、いよいよ車内の清掃を始めた時だった。
あのお方が来たのは…。
ブロロロロ…キュイーン。
私の隣に高級車が止まり、見るからに違う世界のお方が降りてきた。そのお方は、携帯で話しながら車を拭きだした。
「おう、そうや。わかっとるな。そうしてもらえると助かるわ。ははは。」
なにやら、上機嫌そうである。これなら大丈夫だろう。
どれどれ、車内に掃除機をかけようかと思った瞬間、雷でも落ちたかのように洗車場に怒号が響いた。
「何言ってんだ!てめー!ぶち殺すぞ!!!こらぁ!!」
いきなり、あのお方が電話相手にキレだした。
そして、衝撃の言葉が洗車場に鳴り響いた。
「おう!おう!上等や!!来いや!
今、○○んとこの洗車場におるわ、知っとるやろが!チャカでもドスでも持って来いや!何人で来ても構わんわ、待っとたるで!!!」
えっ?来るの??ここに?色々な武器を持った方が沢山?あなた1人なのに?
思わず、洗車場にいた他の人たちと目が合った。
そして、みんな次々と洗車道具を片付けだし、さっさと帰り出した。
はっ、これは、いかん!私も撤収しなくては!
急いで洗車道具を片付け、洗車場を後にしたのであった。
何やらトランクを空けて物探しを始めだしたあのお方と、 洗車中の車内で何が起こったのかと不安げな顔をしてキョロキョロしているおじさんを残して…。