大丈夫?
「大丈夫?」
私が小学生の頃から、家族で食事をしていると母がよく聞いてきた質問である。
普通は「おいしい?」ではないのかと疑問を抱きつつも、「お口に合いますか?」を家族用語で表すと冒頭の言葉になるのかと勝手な解釈をし、「大丈夫」と答えていた。
この言葉の真相を知ったのは、妻と3歳になったばかりの息子を連れ実家に帰省した時だった。
母はカニピラフを作りながら、「大丈夫かな?これも大丈夫かな?」と独り言を言いだした。
私は、「2人ともカニは好きだから大丈夫だよ」と答えたが、母からの返事はない。
まあいいかと私が手前に置いてあったカニ缶を何気に見てみたら、ビックリ!
賞味期限が10年くらい過ぎていたのだ。
直ぐに、母に賞味期限が切れている事を伝えたが、「大丈夫だよ」の一言。母曰く、調味料なら20年、缶詰めなら30年は大丈夫らしい。
呆れた私が、「流石に10年は駄目でしょ」と諭したが、「だって、実際にあんたら大丈夫じゃない」の一言。
そう、母は頂き物の缶詰めや冷蔵庫に入れっぱなしだった食材を料理した時に、私たちへ「大丈夫?」と質問していたのだ。
お気楽主義の母らしいと言えば母らしいのだが、何も知らず、何十年も前のものを幼少時代から食べさせられていたとは恐ろしい。
そう言えば、昔食べた鯨肉のあの味は…。