妻の言葉

「将来、家族が出来たら冷凍食品は食べさせたくない。いつも手作りのご飯を食べさせるんだ。」

結婚前のまだ付き合っていた頃に、妻が言っていた言葉である。

そして、その言葉を聞いて私は「なんて良い子なんだろう。この子と結婚したいな。」と思い、私に妻との結婚を決めさせた言葉でもあった。

結婚当初は言葉通りに冷凍食品を使わない手料理ばかり食べさせてくれた妻であった。しかし、子供が出来て小学校に上がった頃から弁当などに冷凍食品が含まれる事が段々と多くなっていった。

「まあ、色々と家事で忙しいし、しょうがないよな。これはこれで美味いし、まあいいか。」などと思いながら、ずっと文句も言わずにきたのだが、最近では普通の食事も冷凍食品で済ます事が増えており、流石に頭にきたので妻へ冒頭の言葉を言ってみた。

「そんな事言った記憶がないな。誰かと勘違いしてるんじゃない？」

これである。まるで、どこぞの政治家のようだ。
しかも、実は料理する事が好きじゃないとまで言いだした。

その後は、私が結婚を決めた言葉である事や食事がどれだけ大事かなど必死の抵抗をしたが、妻の言っていない、記憶に無いで、会話は虚しく終了した。

もし、昔の私に会えるなら伝えてあげたい。

「その言葉、ボイスレコーダーに残しておけ」と。