手紙【前編】

もうだいぶ前の話だが、父親へ一度だけ手紙を書いた事があった。

社会人になったばかりの頃、私は宮城県で一人暮らしをしており、友人たちと遊びながら彼女はいなかったものの、それなりに楽しい日々を過ごしていた。

そんな私が当時夢中になっていたのが、「北の国から」という番組だ。

この番組に出てくる「黒板潤」という人物に共感し、彼が父親に送る手紙に感動すらしていた。

そして、降り積もる雪を眺めながら、私は決心した。私も父親に手紙を書こう！と。

しかし、いざ書こうとしてみると何を書いて良いのかわからない。迷った私は「黒板潤」の手紙を真似ることにした。

「拝啓 父さん、元気にしてますか。最近は寒くなってきましたが、お身体は大丈夫ですか。
こちらは寒くなってきましたが、なんとか頑張っています。都会の人は冷たいですが、中にはやさしい人もおり～～～それでは、また。」
というような内容にした。

そして、文末には「あ～あ～、ああ、ああ、あ～ああ～、う、う～、ううううう～」と「北の国から」のパロディの手紙である事がわかるようにテーマ曲を書いた。

これで完璧だ。父親も笑いながら、さぞや喜ぶに違いない。
私は、意気揚々と手紙を直ぐにポストに投函した。

しかし、しばらくしても父親からは何の連絡もなかった。

【後編に続く】

すいません。文章が長くなってしまったので、前後編に分けます。